女神は夜明けに囁く~小川まり奮闘記③~
「いえ。今日、いきなりです。どうやって開けたのかも判りません」
私は忌々しく答える。そうだ、ついでに聞いてやろ。
「総務では、ロッカーのマスターキーはどうやって保管しているんですか?誰にでも取れるんでしょうか」
すると彼女は困った顔になった。
「・・・上司の机の引きだしなんですが、場所を知っていれば持ち出すのは簡単だと思います。ロッカーを開けてくれと言われるのは日常茶飯事なので・・・」
誰にでも取れないと、要望にこたえられないってこと?私は少し呆れる。
それでもやはりメーカーの人間が総務の一番奥の部長席まで行くのは目立つに違いない。これは、百貨店側の人間が絡んでいると考えるのが妥当だろう。
ここは総務で掃除しますから、と別の列の空いているロッカーを貸してくれたので、やっと私は売り場へいけた。
時間は既に12時半過ぎだった。
「店長、済みません」
バタバタと売り場へ行くと、大丈夫だった?と福田店長が心配そうな顔で待っていた。
私は詳細を話す。
総務が後を引き受けてくれたことを聞いて、そりゃそうよね、と店長は頷いた。
「お疲れ様。悪いけど私は今日時間調整で上がるのが早いから、もうお昼出させて貰うわね」
はい、行ってらっしゃい、と店長を送り出すと、早速両隣の店の販売員が近寄ってきた。
「小川さん、何事?忘れ物したの?」
私は少し考えて、これは使える、と思った。
デパ地下のゴシップ伝達の早さを今回も使わせていただこう。そうすれば店食が温床になって瞬く間に百貨店に広がり、洋菓子の小川が嫌がらせを受けているらしいと皆が知るところになる。