女神は夜明けに囁く~小川まり奮闘記③~


 私は犯罪者の守口斎の元カノだったり百貨店社員の桑谷さんの妻だったりするので、それでなくても全館の販売員の中で知名度が高いのだ。

 きっと尾びれも背びれもつきまくったえげつない話になって、従業員の間に伝わるに違いない。

 すると、犯人も私に手を出しにくくなるだろう。少なくともロッカーでは。皆が何となしに私のロッカーに注目するだろうことはバカでなければすぐ判る。

 ・・・・あ、あの女はバカなんだった。

 気を取り直して、私は声を潜めた。

 そして、あますことなくされた嫌がらせを話した。皆、まあ~とか、うわ~とか言いながら、わくわくした顔で聞いていた。何て正直な人たちなんだ!その調子で他の人にもベラベラ話し、役に立って下さいね、と心の中で付け足す。

 ネズミにゴキブリ、そして制服。

 話を広めること、これも防御の内だ。

 くそう、犯人があの女だったら、クリーニング代と靴2セット代、必ず請求してやる。


 私の仕掛けた作戦は、3日かかった。3日で全館に広がったことに私は驚嘆した。皆どれだけ噂話が好きなのよ!って。

 私は連休で、3日後に出勤すると、出会う人出会う人に大丈夫?とか、負けちゃダメよ、あなたをやっかんでる人がいるのよ、とか、良かったら私のロッカー使う?などと言われた。

 私はそれぞれに、大丈夫です、とか、私の体に被害はありませんから~とか、別のロッカー頂けましたんで、とか答えながら歩いた。

 男性社員とやたらと目が合うのも、男性の間でも話が広がりつつある証拠だろうと思った。


< 56 / 136 >

この作品をシェア

pagetop