女神は夜明けに囁く~小川まり奮闘記③~
「彼は私の気持ちを理解しようともせず、丸め込もうとしたのよ。これで妊娠したなんて言ったら、これ幸いとばかりに仕事を辞めろとか言うに違いない」
「・・・辞めたらいいじゃん」
私は、もしもし?と弘美を見詰めた。ベランダから半身だけ部屋に入れていた弘美は、その私の顔を見て、あー、はいはい、と手を振る。
「基本的に一人で立ちたいアンタにそんなこと出来るわけないわよね。・・・あーあ、私は桑谷さんに同情するよ。可哀想に、まりと結婚したばっかりに・・・」
ストレートなご意見ありがとう、だ。
大体私は人に命令されるのが嫌いなのだ。仕事を辞めろと言われてハイ了解ですなどとは頷けない。
自分の食い扶持は自分で稼ぎたい。私が家にいるとビールの消費が増えるだけだっつーの。
養ってもらわなくてもいい。主従関係を結びたいわけではない。だから彼のことを「主人が」などとは呼ばない。私が欲しいのは、魂の半分、パートナーなのだ。
手を入れる為に努力したなら、それを持続させる為の努力も必要であるべきだ。ヤツは晩ご飯のあと、それを軽んじた。
今そこをちゃんと固めれないと、遠くない未来にまた同じことを繰り返すだろう。そうすると一緒にはいれなくなると思う。
彼を失えない。
だから、今離れるのだ。
蛍族に転向させられた弘美が部屋に戻ってくる。
そして、取りあえず今は寝ることになった。もう、午前2時だった。
電気を消した部屋でソファーに転がりながらうとうとと考えた。桑谷さん、帰ったかな。伝言に気付いたかな。