女神は夜明けに囁く~小川まり奮闘記③~


 ・・・・・怒ってるんだろうなあ~・・・・。

 暗闇の中に浮かび上がる彼の顔。でも、思い描くことが出来るのは、怒髪天きている迫力満点の彼ではなく、あの日のミルク色の海での透明な瞳だった。

 桑谷さんを傷つけられるのは、私だけ。

 私は今その特権を行使する。

 そして、未来を固めたい。

 その為に、今は逃げて隠れるのだ。

 彼から。



 弘美が作ってくれた朝ごはんを食べながら、行儀悪くあぐらをかいて、私は電話をかけている。

 相手は、実家だ。

『・・・お母さんは彼に同情するわ』

 母が言った。

 私はコーヒーを飲みながら受話器を見る。・・・ここにも、敵が。何てことだ。

『まあでも、まりの考えも判らないでもない。あなたは私似だから、責任は私にあると言える。―――――判ったわ』

 ため息と共に諦めたような声がしたと思ったら、今度は嬉しそうなトーンに変わって母が話す。

『私の定宿をとっておく。それに、楽しそうだから私もそっちにいくわ』

「え?」

 驚く私にテキパキとホテルの名前と場所を告げて、昼にはそこに行くように、と指示を出していた。

『夕方にはそっちに着く。私の名前で部屋を取るから、直接上がるわね。じゃあ、後で』

 そうして電話は切れてしまった。


< 72 / 136 >

この作品をシェア

pagetop