女神は夜明けに囁く~小川まり奮闘記③~
・・・・・怒ってるんだろうなあ~・・・・。
暗闇の中に浮かび上がる彼の顔。でも、思い描くことが出来るのは、怒髪天きている迫力満点の彼ではなく、あの日のミルク色の海での透明な瞳だった。
桑谷さんを傷つけられるのは、私だけ。
私は今その特権を行使する。
そして、未来を固めたい。
その為に、今は逃げて隠れるのだ。
彼から。
弘美が作ってくれた朝ごはんを食べながら、行儀悪くあぐらをかいて、私は電話をかけている。
相手は、実家だ。
『・・・お母さんは彼に同情するわ』
母が言った。
私はコーヒーを飲みながら受話器を見る。・・・ここにも、敵が。何てことだ。
『まあでも、まりの考えも判らないでもない。あなたは私似だから、責任は私にあると言える。―――――判ったわ』
ため息と共に諦めたような声がしたと思ったら、今度は嬉しそうなトーンに変わって母が話す。
『私の定宿をとっておく。それに、楽しそうだから私もそっちにいくわ』
「え?」
驚く私にテキパキとホテルの名前と場所を告げて、昼にはそこに行くように、と指示を出していた。
『夕方にはそっちに着く。私の名前で部屋を取るから、直接上がるわね。じゃあ、後で』
そうして電話は切れてしまった。