ヘタレな野獣
今日はたまたまで、彼女の仕事でもないのに、あんな雑用を押し付けてしまったから・・・

それのどこがご機嫌とりな訳?

心の中で悶々と考えていた。



「田崎さん、今夜、お時間ありますか」


私と同じ日替わり定食を箸でつつきながら、ヨレヨレ君は私にそう言った。


「えっ?今夜?」
「はい、今夜です」
「仕事の話?それとも別の・・「どちからといえば、仕事メインです」
「仕事の話なら今話せば・・「社内で話せない内容なんです」


たたみかけてくる感じで、私の知っているヨレヨレ君と、少し違っていて、驚いた。


「わかった。私は一時間程残業で・・「僕もお付き合いします」
「あっそ・・・とりあえず、早く食べちゃわない?」

私は指で定食を指し、話を終わらせた。






会社を出て、タクシーを拾い、私達は繁華街へ繰り出した。


「知り合いの店があるんで、そこで良いですか?」

会社のエレベーターの中、ヨレヨレ君が提案してきた。


私的にはその辺のファストフード店かコーヒーショップでも良かったんだけど・・・



「ここです」

案内されたのは、こじんまりとした家庭料理を出すお店・・・


「さっ、どうぞ?」


暖簾を潜り、引き戸を開け、中に誘うヨレヨレ君。

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