ヘタレな野獣
「接待だろ?あそこの部長さん、なかなかの接待好きだそうじゃないか、よくリサーチしてたな、関心関心・・・」

部長はそう言って、事務所を出ていってしまった。




「・・・一体どういうつもり?」

何故か武田君がハンドルを握る社用車に乗っている私。

「どういうって、送り迎えっす!
部長に頼まれたっすから俺」

そうじゃなくて・・・

「雨宮、課長?どういう事ですか?」

私が聞いたのは君じゃなくて、ヨレヨレ君だから!

「これは仕事の一環なんでしたよね、だったら上司に報告しなければいけません、そうは思いませんか?ねぇ武田君」

ルームミラー越に武田君がその通りだと大きく頷いている。


はぁ・・・何なの、コイツ等・・・

「今頃部長から、山下部長に連絡が入っている頃です」

追い討ちをかけるようなヨレヨレ君の一言に、私は開いた口が塞がらない。

「俺も課長も補佐の事、心配してるんす」

ミラー越に武田君が私を見ながらそう言った。


ちゃんとしたチームをアピらなくっちゃと、武田君はゲラゲラ笑っている。

「別に契約がとれなくてもいいじゃないですか」

ヨレヨレ君は、窓の外を見ながら独り言を言うかのように呟いた。


そっか、あの日の山下部長が私に言った事、武田君の口からヨレヨレ君に伝わってるんだ・・・

バカみたい、私一人で躍起になって、当の本人はどこ吹く風の如くシラケてる。


< 45 / 148 >

この作品をシェア

pagetop