最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
「エヴルーーーーー!!」
 喉が張り裂けるほど絶叫したつもりだったけれど、実際はほとんど声にならなかった。

 目の前で起こった現実が信じられなくて、体中の血がいっぺんに凍りつく。
 喉の奥からヒィヒィと声を振り絞りながら、私は倒れているエヴルに無我夢中で駆け寄って飛びついた。

 漆黒の衣装が無残に切り裂かれ、赤黒い一本の線が走っている。
 生地の色が不気味に濡れ光っているのが、傷口から溢れ出る大量の血のせいだと気づいて気が遠くなりかけた。

「そんな! あぁ、エヴル! 死なないでエヴル!」
「エヴルさん……キアラさん……」
「ふたりとも……逃げる、べし」

 切れ切れな声が聞こえて、私は慌てて涙の滲む目を向けた。
 イフリート様とノーム様が、兵士たちに体を押さえつけられている。
 ふたりとも胸に手を当ててギュッと歯を食いしばり、まともに呼吸もできない様子で、異様なほど苦しんでいた。

 そういえばモネグロス様が、『この姿でいる時は人間に近い』と言っていた。
 弱まった精霊の力で、きっと無理をしすぎたんだ。

「散々手こずらせやがって! これで終わりだ!」

 エヴルを斬りつけた兵士が、再び剣を振り上げているのを見て、私はとっさにエヴルの体の上に覆い被さった。
 エヴルは殺させない! 絶対に!
< 131 / 162 >

この作品をシェア

pagetop