最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
私はもう、なりふり構わず夫人に向かって懇願した。
「お願いオルテンシア夫人! なんでも言う通りにするから! ティボー様と結婚しろと言うなら、する! 毒を飲めと言うなら飲む! だからエヴルを殺さないで! みんなを助けて!」
ボロボロ涙を零しながら慈悲を請う私と、命をかけて私を守ろうとするエヴルの姿を、夫人は無言で見つめている。
その目に僅かな迷いを見た気がしたけれど、夫人は迷いを振り切るように軽く首を左右に振り、ボウガンを構え直した。
「お別れですわ。キアラ嬢、王子様」
「嫌あぁ! お願いやめて! オルテンシア夫人ー!」
私の泣きわめく声が洞窟内に虚しく反響する。
必死の哀願は届かず、ついに夫人の指先に力が込められ、無情にも引き金が引かれ……
―― ベシィーーッ!
「おめぇ、なにやってんだべ!? そったら危ねえモン、人様さ向げるもんでねえよ!」
とつぜん、叱責とともにニュッと伸びてきた手が、夫人の後頭部を背後からベシッと平手で叩いた。
ガクンと前のめりになった夫人のボウガンから放たれた矢が、そのまま地面に当たってボキッと折れる。
「……え?」
私も、エヴルも、この場の全員がポカンと口を開けて、突如として現れた人物を見つめていた。
不機嫌な顔をして洞窟の中を見回している、羊を連れたその人は……。
「牛飼いのおじさん!?」
「お願いオルテンシア夫人! なんでも言う通りにするから! ティボー様と結婚しろと言うなら、する! 毒を飲めと言うなら飲む! だからエヴルを殺さないで! みんなを助けて!」
ボロボロ涙を零しながら慈悲を請う私と、命をかけて私を守ろうとするエヴルの姿を、夫人は無言で見つめている。
その目に僅かな迷いを見た気がしたけれど、夫人は迷いを振り切るように軽く首を左右に振り、ボウガンを構え直した。
「お別れですわ。キアラ嬢、王子様」
「嫌あぁ! お願いやめて! オルテンシア夫人ー!」
私の泣きわめく声が洞窟内に虚しく反響する。
必死の哀願は届かず、ついに夫人の指先に力が込められ、無情にも引き金が引かれ……
―― ベシィーーッ!
「おめぇ、なにやってんだべ!? そったら危ねえモン、人様さ向げるもんでねえよ!」
とつぜん、叱責とともにニュッと伸びてきた手が、夫人の後頭部を背後からベシッと平手で叩いた。
ガクンと前のめりになった夫人のボウガンから放たれた矢が、そのまま地面に当たってボキッと折れる。
「……え?」
私も、エヴルも、この場の全員がポカンと口を開けて、突如として現れた人物を見つめていた。
不機嫌な顔をして洞窟の中を見回している、羊を連れたその人は……。
「牛飼いのおじさん!?」