最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
 オルテンシア夫人って、実はこの村の出身だったの?
 神殿の世話役の娘? ……そうか。それなら剣のことを知っていたのもうなづける。

 そういえば小さい頃、神殿に行くといつも年上のお姉さんがいて、掃除したりお茶を淹れたりしていた。

 可愛い顔立ちをしていたけれど、すごく変わり者で、そのせいか親しい友だちはひとりもいないみたいだった。

『私はこんな田舎で一生を終えるような人間じゃない』って、口癖のように言っていたけれど……。
 じゃあ、あのお姉さんがオルテンシア夫人なの?

「夫人、あなたは貴族出身ではなかったのかい……? へ、平民の出なのか?」

 ティボー様が呆けたような声で夫人を問い詰めた。
 涙ぐみながらプリシラを撫でていた夫人はハッと我に返って、おじさんとプリシラから後ずさる。

「いいえティボー様! 私は生まれも育ちもれっきとした貴族ですわ! 私こそがあなたの妃に……王妃になるのに相応しい女です!」

「まーだ、そったら寝言ば言ってるだか? タマラ」

「う、うるさい! 黙りなさい小汚い田舎者!」

「田舎のなにが悪ぃんだべ? プリシラば見ろ? おめえさ見捨てられても立派に育って、子ども産んで母親になって、毎日うんめぇ乳ば、たーんと出してくれる。なのにおめえはそったら厚化粧ばして、いままでなにをしてきたんだ?」
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