最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
「黙れと言うのが聞こえないの!? 田舎者!」

「貴族だなんて嘘ついて、お天道様ば真っすぐ見れねえような、やましいことでもしてきたんでねえのか?」

「うっ……」

「オラもプリシラも、毎日ちゃんとお天道様ば見上げて生きてるど? お天道様どころか、自分のことも真っすぐ見れねえヤツさ、バカにされる筋合いはねえ」

 夫人はグッと唇を噛み、まるで叱られた子供のような顔になった。
 いきり立っていた眉尻はすっかり下がり、言い返す言葉を探すようにフラフラと揺れる視線はひどく頼りない。

 なんだか、泣き出しそうなのを懸命に堪えているようにも見えた。

「嘘ついてたんならよぉ、さっさと謝って村さ帰ってこい。心配すんな。おめえの家はちゃんと残ってっから」

「お……大きなお世話よ!」

 首を大きく左右に振った夫人が、クルッとティボーに向き直って目を吊り上げながら怒声を張りあげた。

「なにをしているの!? ぼやぼやせずに早く剣を抜き取りなさい! ほんとにグズなんだから!」

「え? あ……」

「王位に就きたいのでしょ!? だったら、私たちのやるべきことはひとつよ!」

 歯を剥いて怒鳴り散らす夫人の迫力にのまれたように、ティボー様が再び剣に飛びつくのを見たノーム様が、苦しそうな声を振り絞って訴えた。

「だめです! その剣を抜いちゃ……!」

 でもティボー様は構わず柄を両手で握って、グイッと引き上げる。
 呆気ないほどスルスルと、ヴァニス王の剣が台座から抜けてしまった。
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