最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
「だれか……剣……を……」
 ノーム様が震える指先でティボー様を指し示しながら、小さな声で懸命になにかを伝えようとしている。

 私は地面にガバッと四つん這いになって、ノーム様の口元に耳を寄せた。

「剣!? 剣がなんですか!?」
「あの剣を……取り、もどし、て……」

 ……そうか! この仕掛けは、エヴル以外の人間に剣を持たせないための仕掛け!
 だったらエヴルが剣を取り戻せば、洞窟の崩壊は止まるのかもしれない!

「ちょっとボンレスハム! その剣返して!」

 私は弾かれるように立ち上がり、ティボー様目指して必死に走った。
 揺れはますます激しくなって、バランスがとれずに何度も転びそうになったけれど、そのたびにグッと足を踏ん張って持ちこたえる。

 ……負けない! だてに子どもの頃から毎日田舎道を駆けずり回って、足腰を鍛えたわけじゃないわ!

「キアラ様! 危ない!」

 落下する岩の合間を縫うようにフラフラと走る私の背後からは、世にも悲痛なエヴルの叫びが聞こえてくる。

「あなた様だけでもお逃げください!」
「嫌!」
「お願いですからお逃げください!」
「嫌! 私はエヴルを見捨てたりしない!」
「いいから早く逃げろ! 俺に構うなー!」
「嫌ぁーーーーー!」

 振り向きもせずに怒鳴り返して、私は走った。
 そして腰を抜かして地面にへたり込んでいるティボー様の腕から、剣を取り戻そうと手を伸ばした。
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