最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
 永遠のように感じたけれど、たぶんほんの一瞬のことだったんだろう。
 やがて激しい揺れも、恐ろしい音も止んで、辺りは嘘のようにシーンと静まり返った。

 恐怖の時間が過ぎ去って、混乱の極致だった私にも、ようやく頭を持ち上げて辺りの様子を窺えるだけの余裕が生まれる。

 慎重に起き上がって周囲を確認すると、さっきまで私と夫人が揉み合っていた場所に巨大な岩山の壁ができていた。

 天井から崩れ落ちてきた大量の岩々が、上までびっちり隙間なく積み重なって塞がってしまっている。
 背後は洞窟の行き止まりだし、どうやら完全に閉じ込められてしまったようだ。

 とりあえず岩の下敷きになってペシャンコにされる事態だけは免れたけれど、危機的状況には変わりないらしい。

 それでもあちこちの宝石の光のおかげで周囲は明るいし、おそらくエヴルも助かったろうし、とりあえず私はホッと息をついた。

「なんなのよ! これは!」

 金切り声が聞こえてそちらに目を向けると、夫人が岩山の壁をベシベシ平手で殴りながら元気に叫んでいる。
 ……忘れてた。そういえばこの人も私と一緒に吹っ飛んだんだわ。

「ちょっと! 誰か! 私はここよ! 早く助け出しなさい!」
「無駄でしょ。壁はだいぶ厚いみたいだし」

 そう言って近寄る私を、夫人はギロッと睨みつけた。
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