最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
「好きで村を出たくせに。あなたは勝手に独りになったんでしょ? 村にはあなたを気にかけてくれる人がたくさんいるじゃない」

「あんな田舎で、私にどうやって生きろっていうのよ!」

「どうもこうも、ただ生きていけばいいのよ。おじさんやプリシラみたいに、お天道様を見上げながら」

 夫人はグワッと大きく息を吸い込んで怒鳴ろうとしたけれど、私に「ほら、空気の無駄遣い」と指摘されて、グッと言葉を飲み込んだ。

 そして目尻を吊り上げながらズカズカ近寄ってきて、私を見下ろしながら憤まんを吐き散らす。

「いかにも、恵まれた御令嬢のおっしゃりそうなお綺麗ごとね。つまり我々平民なんか、しょせん土にまみれて生きろってこと?」

「誰もそんなこと言ってない。誤解しないで」

「言ってるわよ。あんただけじゃなく、世界中がそう言ってる。……私はね、ご覧の通り美貌に恵まれて、知性にも恵まれているわ。ただ、生まれだけは恵まれなかった」

 見えない大きな敵に挑むように、夫人の目にも声にも凛とした力がこもっている。
 その堂々とした態度からは、彼女なりの確固とした信念が感じられた。 

「私は、こんな田舎の庶民の生まれというだけで、人生が決められてしまった。でもあんたは違う。精霊家に生まれただけで、私には一生手に入れられない物をやすやすと手に入れるのよ」
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