最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
「バカにしてるんでしょ!? 田舎者の庶民のくせに身の程知らずにも頂点目指して、あげくに全部を失ってしまった私を! そうやって思う存分、嘲り笑うがいいわ!」

「だから、誤解しないでって言ってるでしょ? あなたのことを嘲っているのは私じゃないし、世界でもない。あなた自身よ」

 また熱が上がったのか、すごく体が熱くて苦しい。
 両頬は火がついたように火照っているし、全身にじっとり汗が滲む。

 寄りかかっている岩壁から身を起こそうとしたけれど、体に力を入れた途端に背筋にざわざわ悪寒が走って吐きそうになって、またグッタリ寄りかかってしまった。

「……目指したいんだったら、頂点だろうが地平線の彼方だろうが、どこでも好きに目指せばいいじゃない。誰も止めないわよ。でも、精霊家の領地で生きる人たちを貶すことだけはやめて」

 喉が渇いてツバを飲み込もうとしたけれど唾液も出ず、口の中がカラカラで声が掠れる。
 それでもなにかに駆り立てられるように、熱に浮かされたまま私はポツポツとしゃべり続けた。

「自分の価値を認めるか認めないかは、自分の思いひとつ。だから私はもう決して、自分の中に流れる血を卑下したりしない……」

 精霊の血が流れていて、異世界の血が混じっていて、それが私。
 ただそれが当然なのだと、素直に認めればいいだけ。
 私が自分を卑下したら、私を愛して大切に思ってくれている人の真心まで卑下して踏みにじることになってしまう。
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