最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
 やがて黄金の光が、風に吹かれる黄砂のような粒となって天に向かって吹き飛んで行く。

 ようやく姿を現したふたりを見た瞬間、私は今度こそ驚きのあまり腰を抜かしそうになった。

 ……そこに立つ者たちは、イルフォとテーラじゃなかった。

 それは、『人』ですらなかった。

 あえて言うなら、『赤』と『緑』。

 雄々しく精悍な顔立ちをした者の髪は、燃え上がるような真紅。
 そして瞳の色も熱い血潮を連想させる見事な赤色。

 小柄で少女のような可憐な顔立ちをした者の髪は、濃い緑色に少し茶が混じった豊かな巻き毛。
 そして瞳の色は温かみのある濃茶。

 その者たちの肌は白磁のように滑らかで、一切の血色が見られない。
 不思議な質感と存在感を感じさせる、言葉では言い表せないほど美しい存在だった。

「神による封印が、いま、解かれたり」
「キアラさんの解放に、同調したのだとおもいます」

 瞬きを忘れたように見開かれた私の両目が、ポカンと開いた口を支える頬の筋肉が、ピクリとも動かせないほど固まってしまっている。
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