プリズム!
「夏樹かっ?良かった…。やっと繋がった…」


雅耶は思わずその場に足を止めてホッとした様子を見せると、嬉しそうに笑顔を浮かべた。

「今、何処にいるんだよ?ずっと連絡取れなくて心配してたんだぞ?」

そう言いながらゆっくり歩き出すも、電話の向こうの夏樹の反応が返って来なくて再び足を止める。

「…夏樹?…聞こえてるか?」

『………』


(…電波の調子が悪いんだろうか?)


耳を澄ましながらも、そんなことを考える。

だが、まるきり音が聞こえないという訳ではないようだ。

周囲に人のざわめきなどは聞こえないが、ガサガサという音が聞こえてくる。


(これは…風の音…?)


「夏樹?…もしかして、今外か?もう帰ろうとしてる途中だったりするのか?」

そう言いながらも、とりあえず一階へ降りようと足を進める。

すると…。


『…まだ、いる…よ…。…いるけど…』


小さな、少し(かす)れた声が聞こえて来た。

その普段と違った夏樹の様子に、雅耶は再び焦燥(しょうそう)感が増して来る。

「夏樹…?…何かあったのかっ!?今どこにいるんだっ?すぐに迎えに行くから場所をー…」

そこまで言い掛けた時、雅耶の言葉を遮るように再び小さな声が聞こえて来て、慌ててその声に耳を傾ける。

夏樹のその些細な言葉さえも逃さないように。
< 138 / 246 >

この作品をシェア

pagetop