プリズム!
痛くて痛くて、苦しくて。

夏樹は、痛む左胸部分を右手で握り締めて俯いていた。

「……っ…」


『電話切るぞ!』

珍しくイラついた様子の雅耶の声と共に、通話は途切れた。

それを頭の端で理解しつつも、左耳に当てたままの携帯を暫く離せずにいた。


(…まさや…。きっと、怒ったんだ…)


オレがいつまでも、女々しいから…。

当たり前だ。

こんな自分…飽きられて当然じゃないか…。


「…う……っ…」


ぼろぼろと溢れ落ちてくる涙。

もう声を抑えることも(まま)ならず、ただ泣くことしか出来ない。

とうとう携帯を耳から外すと、それを両手で握り締めて額に当てたまま俯いて泣いた。


その時だった。



突然、ザァーーーーっと、一陣の強い風が吹き抜けてゆく。


木々は大きくざわめき、多くの枯葉が周囲を舞った。

夏樹は、膝の上に乗せたままでいたマスコットを風に飛ばされそうになり、慌ててそれを掴むと(こら)えるように目をつぶった。

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