プリズム!
「う…ホントだ…」

恐る恐るガラス越しから身を引くと、

「もしかして怖い?夏樹…?」

その様子を見ていた雅耶が聞いて来た。

「流石に、これだけ高くなってくると怖い…かな」

笑顔で答えたつもりが、どこかぎこちないのが自分でも分かる。

すると、雅耶はクスッ…と優しく笑った。

「夏樹でも怖いもの、あるんだな」

「そりゃあ…怖いものくらい、私だってあるよ」

頬を膨らませて拗ねるようにそう言うと、雅耶は「冗談だよ」と笑った。


「でも…」

「え…?」

「俺も…今、怖いかな」


少し間を置いた後、急に硬い声色でポツリと呟いた雅耶に、夏樹は不思議そうにその顔を見上げた。

その表情は声の割に穏やかではあったけれど、真面目な瞳がそこにはあった。

雅耶は夏樹と目が合うと、僅かに表情を緩めてゆっくりと口を開いた。

「夏樹と一緒にいられて、こんなに楽しくて、幸せで…。本当に良いのかなって。何だか怖いくらいだなって」

「…雅耶…」


普通に聞けば、結構気障(キザ)な台詞だと思うのに。

雅耶が言うとそんな風に感じなくて、何故だか切なくなる。


何と言ったらいいのか分からなくて、その目の前の顔をじっ…と見つめていたら、雅耶がさり気なくポケットから何かを取り出して、改まってこちらへ差し出した。

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