プリズム!
こんなやり取りはいつものことなので、直純は気にする様子もなく、それに笑顔で応えると言った。

「いや、可愛い子が入店を迷ってるみたいでさ」

ウインクしながら扉の方を親指で示している。

「…可愛い子?」

仁志が首を傾げたその時だった。

店の扉が、カラン…と音を立てて開いた。


「こんにちはー。お疲れ様です…」


そこには、すっかり女子高生な姿の夏樹が照れ臭そうに立っていた。

少し見ない間に髪が伸び、すっかり女の子らしくなっていて見違えるようだった。

可愛らしい制服がとても良く似合っている。

そのあまりの愛らしさに二人とも思わず見とれてしまっていたが、直純は優しく微笑むと、夏樹が構えたりしないようにいつもどおり声を掛けた。

「おかえり、夏樹。よく来てくれたなっ」




「やっぱり女の子は華やかで良いもんだなぁ」


今日のバイトを終えて、空いた店内のカウンターの端でいつも通り(まかな)いをご馳走になっていた夏樹は、笑顔で見つめてくる直純の言葉に「…えっ?」と、思わず赤面して手を止めた。

途端に、仁志が直純に冷たい視線を送りながらツッコミを入れる。

「直純、お前…オヤジのいやらしい(つぶや)きみたいだぞ」

「あ。ヒドイ。…だって、可愛くないか?夏樹、その制服凄く似合ってるぞっ」

直純は変な含みもなく、あまりにも爽やかに言って来るので、

「あ…ありがとうございます…」

と、頬を染めながらも、そんな二人のやり取りに苦笑を浮かべた。

「まぁ、確かに…な。君が本当に女の子だったんだなって今更ながらに実感してるかな」

仁志がこちらを見詰めながら言った。
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