御曹司は身代わり秘書を溺愛しています

怜人の尽力もあり、父の会社は無事再起を果たした。

もともと父の会社では化学肥料や農作物の遺伝子組み換えなどを手掛けていたが、その取引先の多くがまた顧客として戻ってくれ、まずまずの経営状態を保っているらしい。

一度は光本製薬に特許を取られたあの研究も、向こうが特許を取り下げるという結末で収束した。

実際は内部の情報漏えいなど、刑事事件にもあたる出来事があったと予想されるが、何よりも康弘さんの行く末を心配した父がその辺りの事情を不問に付した。

そんな父の態度に、業界の中でも賛同してくれる人たちも名乗りを上げてくれ、なによりもともと働いていた従業員のほとんどが戻ってきてくれたことが、こんなに早く事業を再開できた理由だろう。

康弘さんの行方は今のところ分からないけど……。

父は彼の家族ともたまに連絡を取り、再会ができる日を待っている。


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