御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
プロポーズは腕の中で
「理咲!お母さんたち、もう行くから!」

階下から聴こえる母の声に、こちらも大きな声で応える。


「行ってらっしゃい!お祖母ちゃんも気を付けてね!」


はーい、という明るい声と共に玄関が閉められる音がして、また静かな朝の空気が戻ってくる。


私はまだ薄暗い部屋の灯りもつけず、六畳の和室に置かれた簡易なベッドから起き上がり、パソコンの電源をいれた。


「また沢山入ってる。ありがたいけど、相当お待たせしなくちゃいけないなぁ……」


インターネット販売の画面を確認すると、今日も注文がたくさん入っている。

先月発行数の多い雑誌で紹介されたためか、今月に入ってまた注文が殺到している。

十二月に入って一週目のこの時期は、ちょうどボーナス支給の時期とも重なるから、その影響もあるかもしれない。

私はリストを見ながら、おおよその発送時期を伝えるメールを、順にお客様に返信していく。






怜人のもとを去って約一年が過ぎた。

あの後、私は伊豆の実家に戻り、こうやって祖母と母の商売を手伝っている。

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