御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
番外編 ふたりで始める物語
怜人と再会してから早くも三週間あまりが過ぎた。

ロンドンの街はクリスマスシーズンを迎え、色とりどりのイルミネーションで飾られている。

ショーウィンドーも行き交う人々も、誰もが穏やかな喜びの表情を浮かべているクリスマスの街並みは、やはり日本のものとは少し違っている。

深く根付いた信仰の中にあるクリスマスの意味が、日本のそれと違っているのが大きな理由だろう。

私は怜人との待ち合わせ場所であるカフェで、温かなミルクティを飲みながら、窓越しに行き交う人々を眺めていた。


急遽私がロンドンにやってきたのには理由があった。

クリスマスシーズンのこの時期は、ロンドンの社交界ではパーティが盛んだという。

そこで、良い機会だから私のお披露目も兼ねて幾つかパーティに出席してはどうかと、怜人のお父様であるウィリアムが言い出して……。

普段はあまりその手のパーティには参加しない怜人は最初かなり渋ったようだけれど、お父様から『こういう根回しが後々理咲のためになる』と言い含められ、嫌々承知したというのが本当のところだ。


にわか揃えのドレスとダンスの猛レッスンの末、何とか怜人に恥をかかすことなくいくつかのパーティへの参加を果たし、ご挨拶すべき方々へのお目通りを終え……。

数々の試練に怜人とふたりで耐え、ようやく解放された今日には、もうすでにクリスマスイブを翌日に控えていた。


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