御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
「今日はお昼も満足にとられていないですし、きちんとしたものを召し上がった方が良いと思います」
「そうですよ。怜人さま、理咲さんもいらっしゃることですし、ご一緒にどちらかで食事されてはいかがですか」
私の言葉に、そうだと言わんばかりに六車さんが強引にデスクの上を片付け始める。
「でも……」
「一生懸命になられるお気持ちは分かりますが、お体を壊してしまっては肝心な時に動けなくなりますよ。健康管理も成功の秘訣では?」
穏やかな口調で六車さんに言われ、小さなため息をついた怜人さまにようやくいつも笑顔が浮かぶ。
その顔を見て、安心したように表情を緩めた六車さんが、今度は私に視線を移した。
「理咲さん、申し訳ありませんが、怜人さまの夕食におつき合い頂けませんか?怜人さまは、おひとりでの食事がお嫌いなんです」
六車さんの言葉を黙って聞きながら、怜人さまが探るような視線を私に向ける。
まるで何かをねだる子供のような視線は、いつも圧倒的な余裕を見せつける怜人さまとはまるで別人のように頼りない。
不意に胸の奥をつかまれたような気分になる。
「私で良ければ、お供します」
そう答えると、瞬時に華やかな笑顔が彼の顔に浮かび、心臓がどきりと跳ねる。
迷子の子供みたいな顔を見せられたあとにこれでは、あまりにも威力がありすぎる。