素敵な夜はあなたと・・・


「お母さんの所には帰らない」


 茜にとっては母親でも何でもない。美佐は夫の優也の浮気相手でしかないのだから、そんな美佐のところへ自活出来ないからとおめおめと帰れるわけがない。


「茜、強がらなくてもいいのよ。出来ないのは恥ずかしい事じゃないのよ。」

「やろうと思えば出来るわよ。これまでやって来たのだから。ただ、今は何もしたくないだけ。」


 茜は美佐に早く帰れと言いたい気分だった。夫の愛人の顔をした母親など見たい気分ではなかった。

 娘の夫を横取りするような母親の顔を見ていたくない茜は美佐の顔を見ようともしなかった。



「茜、優也さんと何があったの? 別居をするなんて・・・・ねえ、茜?」

「お母さんには関係ない!」


 美佐は初めて見る茜の冷たい目に驚きで何も聞けなくなった。

 まるで美佐を憎んでいるかのような目つきに、優也との関係を知られてしまったのではないかと恐ろしくなった。

 かと言ってここで拒否するような発言をすれば単なる言い逃れに過ぎず、茜の美佐を見る目はもっと激しくなるような気がした。

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