素敵な夜はあなたと・・・
優也が本気で怒っている様子に茜は一瞬怯んだが、そんな優也の脅しなどには負けやしないと自分を奮い立たせた。
「朝食の準備が出来ていないならもういい。外で食べる。」
そう言ってリビングから出て行こうとする茜の腕を引き寄せるとしっかり抱きしめた。優也の力強い腕でしっかりと抱き締められるとその胸に何時までも頬を寄せていたくなる。
けれど、この腕も逞しい胸も全て美佐のものだと思えば茜は優也を押し退けるしか出来なかった。
「怪我は大したことなかったのだから、そんなに大袈裟に振る舞わなくても大丈夫よ。そんなことでお祖父ちゃんに告げ口はしないから安心して。」
優也は会長に告げ口されることなど考えてもいなかった。ただ、茜の態度が気に入らなかっただけだった。優也を夫として見ようとはせず、何時までも会長の部下の様に扱う茜に腹を立てたのだ。
今更そんな事を言えるはずもなく、優也は茜を本気で心配しているのだと気付いてほしいと思っていた。
けれど、茜は優也の優しさは相変わらず偽りのものだと信じていた。
茜と優也の気持ちはお互いにすれ違ったままで月日だけが過ぎて行った。