素敵な夜はあなたと・・・
行き場を失くした茜は一人で居るのがあまりにも辛かった。だから、本当は帰りたくない所なのに、母親の顔が見たくなり実家へと帰った。
恐る恐る実家へと足を運んだ茜。そこに優也の車があるのではないかと気にはなったものの、その日は優也の車は見当たらなかった。
ホッと胸を撫で下ろした茜は戸惑いながらも玄関のドアノブを握り締めた。
夫の浮気相手の家とは言え、自分の実家であり自分の親の家でもある。その家を訪問することのどこが悪い?!と、開き直った茜は勢いよく玄関ドアを開けた。
すると、玄関には沢山の荷物が置かれていて今から引っ越しでもするのかと思わせる様に高々と積まれていた。そこへ、美佐がやって来ると茜を見て少し気まずそうな顔をしていた。
それもそうだろうと茜は思ったが、優也が美佐を思う気持ちもなんとなく分かる。自分はまだ子供だけれど母親の美佐は成熟した女性なのだ。そんな美佐と自分を比べる方が間違っていると、久しぶりに会った母親を見て茜は何となく納得してしまった。
「これ、引っ越すの?」
もしかしたら優也と一緒に暮らすつもりなのだろうかと茜は胸が痛んだ。けれど、優也が美佐と一緒になる方が幸せなのだろうと思えてしまった。
「まさか、お父さんが置いていた荷物を引き取るからって、少しずつ運び出しているのよ。」
「お父さんが来るの?!!」
「そうよ。今日は一緒に食事しない? 久しぶりに親子水入らずで?」
まだ笑顔で一緒に食事が取れるほど完全に気持ちが吹っ切れた訳ではなかった茜は首を横に振った。