猫の湯~きみと離れていなければ~
「相変わらず女優さんは目立ちますねぇ。だからフードコートは避けた方がよかったんじゃねぇの? 」
持ち帰り用の紙袋をぶら下げ、ハンバーガーとジュースを乗せたトレーと共にやって来た陽向が、カメラから莉子の姿を隠すように側に立った。
「…ね? 」
誇らしげにわたしに微笑えむ莉子は本当にお姫さまのようで、わたしでさえ守ってあげたいと思うほど可愛い。
陽向が、…莉子のナイトなんだね。
ここまで仲のよさを見せつけられたら、陽向を好きでいることさえ莉子を裏切ってしまっているような気持ちになってきた。
「いつもお気遣いごくろうさまです。お迎えが着いたみたいだからもう帰るわね 」
スマホに届いたメッセージを確認した莉子は、わざと丁寧な口調で陽向にお礼を言った。
「鈴、少し待ってて。莉子を駐車場まで送ってくるから」
テーブルにトレーを置いた陽向が莉子の荷物を持とうとしたが、莉子は首を振って断った。
けれどその表情はうれしそう。
「すぐそこだし大丈夫よ。鈴、今度はゆっくり話そうね」
「うん、お仕事がんばってね」
ごめんね、莉子。
わたし今、莉子が帰ることにホッしてる。
「陽向くん、ご・ち・そ・う・さ・ま 」
莉子は陽向に意味ありげな目線を送ると、ハンバーガーの入った紙袋を持って帰っていった。