猫の湯~きみと離れていなければ~

わたしは陽向の手を強く振りほどくと、胸の前で握りしめた。


陽向の感触がまだ残っている手が震え出している。

それは陽向の心配りを拒否したからだけじゃない。



“2人だけの当たり前”


それを無くさなきゃならないことへの寂しさからだと分かっている。



「どうした? 」


陽向は何ごとかとわたしの顔を覗いてきた。


本当は顔をそらしてしまいたい。

でもここでそらせば、変に思われ思われてしまう。


わたしは陽向の目を見て答えた。


「もう一人で乗れるようになったから」

「でも乗れてなかったよな? 」


わたしの気持ちを察してくれない陽向の正論。

そんなの自分が一番分かってる。


「今のはたまたまなの。もうこんなことしなくていいから」

「そっか。つい子供のときの感覚でさぁ」


陽向は申しわけなさそうに笑うと、くしゃくしゃと頭をかいた。
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