☆お見舞いに来てください☆

「まだ母のことを思い出したりしますか?」

「もちろん。今まで一度だって忘れたことはないよ。紗英ちゃんは僕の最愛の人だったから」


当たり前のように言われ、思わず次の言葉が出なかった。

とても素直な人だ。今更ながらに思う。
だけどそれを聞いてあることを確信した。薄々は分かっていたけれど、私の疑問がやっとこの時晴れた。


「もしかして、毎年母のお墓にお花を供えてくれてるのって中嶋さんですか?」

「ああ、そうだね」


聞くまでもなかった。
やっぱりそうなのだと思ったらどうしてか少し安堵した。
毎年命日になるとお墓は綺麗に洗われて必ず母の好きだった花がお供えされていた。
母をまだ覚えててくれる人がいる。それだけで何故か気持ちが温かくなる。


「あの、ありがとうございます」

「いや、当然のことだよ」


彼はやっぱり優しく微笑んだ。
その表情から今も尚母への愛情が伝わってくる気がして、感謝の気持ちさえ込み上げた。


「あの、中嶋さん結婚は……」


ちらっと左手の薬指を見た。だけどそこには結婚という形のリングは見当たらない。


「もしかして一人ですか?」


あれからずっと…
まさか今まで一人だったのだろうか?
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