☆お見舞いに来てください☆

それからはただ方針状態だった。
自分のことのようで他人事のような感覚。
ぎゅっと抱き締められる温かさの中、頭の中が異様にふわふわしてた。

先生の真剣な声だけが私の鼓膜にダイレクトに入ってくる。


「俺にはもう未来ちゃんしかいないと思ってる。この先もう一度結婚するなら未来ちゃんしかいないってね。だから未来ちゃんのこれからを俺にちょうだい」

「せんせ……」


あまりの衝撃に私の視線は驚きと戸惑いで揺れていた。
何も言葉にならないのは当然のこと。
だけど先生はそんな私の心境を全て悟ってるかのように、すぐに答えを求めようとはしなかった。

ただ優しく私の頭を撫で、暫くすると一旦私から離れて少しぬるくなった自身のコーヒーをカチッと開ける。


「別に返事はすぐじゃなくていいよ。これからゆっくり考えてくれればそれで。また冷静に考えれるようになったときにちゃんと聞かせてくれる?」


ただ、先生の顔をほわんと見つめてた。
いつもと変わらない。黙り込む私を咎める訳ではなく、とても穏やかな口調だった。


「とりあえず俺の本気を分かって貰えればそれでいいかな。未来ちゃんとこれから一生を添える覚悟だってことを今は分かってもらえたらいいよ」


そこまで告げられて何も言わないわけにもいかず、方針状態のまま頷いた。
この時、私は先生の瞳にどんな風に映っていたのだろう。


不安げ?
それとも間抜け顔?
自分でも分からない戸惑いを感じながら喉は異様にカラカラだったけど。
どうしてか貰ったレモンティーを飲むことができなかった。開けることもできず、ただじっと見つめていた。
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