☆お見舞いに来てください☆

「怖かったんです」

「え?」

「先生が取られちゃうんじゃないかって怖かった」


それが一番の理由だ。
口にしたらその思いがぶり返すよう強くなる。
私はあの時先生が取られるんじゃないかって急に怖くなったんだ。

この人だけは失いたくはない。だけどその分不安も大きくなり、私は弱い人間になっていた。


「世の中に絶対なんてないんです。形あるものは予期せぬ瞬間簡単に壊れちゃうんです」

「えっ……」

「昔父に言われた言葉です。世の中には絶対なんてないんだよって。愛なんて一時的なまやかしだって。形あるものは脆く、人を簡単に裏切るものだからって」


遠い記憶が私を縛り付ける。
荷物をまとめ、家を出る瞬間あの人が私に残していった言葉だ。

トラウマのように私の心の中をかき乱す。
だからいつも不安だった。
この幸せは…、先生との甘い生活はいつまで続くのだろうって。
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