あの日ぼくらが信じた物
「うふふ、そうね。ロマンティックだわ?」


 体育座りをして並んで星空を見上げていたぼくらは、自然と肩でもたれ合い、寄り添っていた。


「チュ、チューしてもいいかな」


「あきらくん。そういう時は私のことをじっと見詰めればいいのよ」


「こ、こうかい?」


「いちいち聞かないのっ」


 みっちゃんは大人みたいにぼくを諭すんだ。でもぼくはなんだか魔法に掛かったみたいに言われた通りにしてしまう。


「みっちゃん」


「あきらくん」


「………」


 ぼくが何も言わずにみっちゃんを見詰めると、そのウルウルした瞳がゆっくりと閉じられた。


「……んっ、んんっ……」


 そしてぼくらは初めて、大人のキスをしたんだ。


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