あの日ぼくらが信じた物
 そして昼間言った自分の不用意な台詞を思い出す。

『時間は沢山有る』

 みっちゃんに取って、それはどんなにむごい言葉だったろう。


「何も解ってあげられなくてごめん! みっちゃんが一番辛いのに、ぼく……ごめん」


 ぼくは泣きながら一晩中みっちゃんに謝り続けた。



次の日の放課後───────



「昨日お母さんから聞いたでしょ?」


 いつもの神社に行く道すがら、みっちゃんが沈黙を破った。

ぼくはと言えばなんて言葉を掛けたらいいのか解らず、ただ黙って歩を進めるしか無かったからだ。


「う……うん」


「私はね、あきらくんと出会えて、そしてこんなにも好きになれたから、もう死んだっていいの」


 彼女の顔からは昨日の恐さが消えて、優しい微笑みで一杯になっていた。


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