あの日ぼくらが信じた物
「…………」


「……みっちゃん、みっちゃんってば!」


 ぼくは魂が抜けたように佇んでいる彼女の肩を揺すっていた。遠くからは猿とも鳥ともつかない生き物の声が聞こえてくる。

 ぼくらはうっそうと生い茂る、熱帯植物のただ中に立ち尽くしていた。


「……本当に……来れた……わね」


 ぼくは2人の足元で鈍く明滅している石を拾い上げ、まじまじと眺めた。

ぼくらをここに連れてきたそれは、ひと仕事終えた証明だとでも言うかのように、ほんのりと温かくなっている。


「凄いよみっちゃん! ほんとに凄い。ぼくら本当に南の島に来ちゃったよ」


「でも……あきらくん、私駄目かも……」


「どうしたみっちゃん! 具合でも悪くなっちゃったのか?」


 ぼくは彼女の肩を抱き、青くなりながら聞いた。


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