あの日ぼくらが信じた物
「そ、そうか。でも良かったのかい? ふたつもやめちゃって……」


 努めて普通に振る舞いながら聞くぼくに、みっちゃんは悪戯っぽく微笑みながら身体を寄せてくる。


「本当はね、2つとも凄く退屈だったのよ! 丁度良かったわ? フフフ」


「なんだよ、みっちゃん。ぼくはダシに使われたって事かっ」


 彼女も一生懸命普通にしているけれど、その笑顔には一瞬の翳カゲりが過ヨギる。

ぼくはそんなみっちゃんを見てられなくて言葉を繋いだ。


「で、でもこれで余計に色んな所に行けるよね。

 ぼくも嬉しいよ」


「うん、あきらくん。……でも私の我が儘に付き合って貰ってごめんなさい。

 あきらくんにも付き合いが有るのに……」


 ぼくはみっちゃんに時間を合わせる為にクラブを辞めていた。まあ元々友達の付き合いで入ったクラブだったから、幽霊部員みたいなものだったけど。


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