あの日ぼくらが信じた物
 蚊の大群は力無く地面に墜ちていった。


「私の血はあげないんだからっ!」


 声の方を見ると、みっちゃんもスプレーで応戦している。

 奮闘の甲斐が有ったのか蚊の攻撃も一段落したので、蚊取り線香をむせる程に焚いてぼくらは探検を開始した。


「さっきのあきらくん、格好良かったっ」


 みっちゃんはぼくの手を取り抱き締める。うちの近所では考えられないベタベタ加減だ。嬉しいけれどそれより……暑い。


「みっちゃん! 足元が悪いんだから真面目に歩こう」

「はぁぁい、解りましたぁ」


 しぶしぶ離れる彼女だったけど、ぼくだって複雑だ。次は気候がいい所にしようと心に決めたんだ。


「痛いっ」


 すると突然みっちゃんが、足を押さえて踞った。


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