あの日ぼくらが信じた物
「どうした! 足を捻ったのか?」


 ぼくが駆け寄ってみっちゃんの手をどけようとした時。


「駄目っ!」


 彼女の剰りの剣幕に、ぼくは思わず手を引っ込めてしまう。


「ど、どうしたんだよ一体っ」


 みっちゃん自身も自分の大声にびっくりしてしまったようで、所在なさ気に俯いている。


「大丈夫かい?」


 ぼくがみっちゃんの肩を優しく抱いて問いかけると、ようやっと表情を柔らかくして呟いた。


「あきらくんには見られたくなかったのよ、これ」


 みっちゃんの手がどかされたそこには、握りこぶし大に赤く膨らんだ肉の塊が有った。ぼくはみっちゃんの命を脅かしている元凶をまの当たりにして、何も言えずに黙りこくってしまった。


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