あの日ぼくらが信じた物
「イヤな物見せちゃってごめんなさい。もう大丈夫だから行きましょ?」


 みっちゃんはぼくに気を遣ってそんな事を言う。ほんとは自分が一番辛いはずなのに、彼女はいつだってそうなんだ。


「イヤじゃ無いよ。隠さなくてもいい、それが今のみっちゃん自身なんだから。

 ……でもぼく、そいつが憎い。みっちゃんに辛い思いをさせているそいつが、堪らなく憎いんだ」


 ぼくは身体の穴という穴全てから火を吹き出しそうな程、全身が熱くなっていた。それはこのむせ返る程の気温の所為ではなく、彼女の病気に対する憎悪がそうさせていたんだ。


「有り難う。私だってそう。だから本当は足ごと切断する筈だったんだけど、普通の生活が出来なくなってしまうからよしたの」


「みっちゃん……」


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