あの日ぼくらが信じた物
「それに、どうせ切ったとしても確実に助かる訳ではなかったのよ。

 そしてもしそんなことをしていたら、あきらくんともこうして居られなかったし……」


 そう言ってみっちゃんはぼくに心配を掛けまいと、さも何も無かったように立ち上がった。


「さ、行きましょう」


 少しビッコを引きながら歩き始めた彼女の後ろ姿を見送りながら、あの弱かったみっちゃんの成長振りに、改めて驚いているぼくが居た。

そしてその更なる成長を妨げようとしている、運命とかいう目に見えない物を、ぼくは心の底から憎んだんだ。


「ほらほらあきらくん、綺麗なお花! 来て来て!」


 みっちゃんは眩しいほどの笑顔でぼくを呼ぶ。まるでこっちが病人で、彼女に元気付けられているみたいだ。


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