あの日ぼくらが信じた物
「だってパパったらペンギンの水槽に落ちちゃったのよ? はははっ」


 楽しそうに笑うみっちゃんを見ていたぼくは心が温まったけど、身体は逆にどんどん冷えて行くんだ。


「早くバンクーバーに行かなきゃ、ぼく達風邪引いちゃうよ?」


 ぼくはみっちゃんの身体のことも気遣って言ったのに。彼女は嫌味を言われたと思ったみたいだ。


「でも私、カナダドル持ってない。ここからバンクーバー迄は州またぎだから、かなりお金が掛かるし……そんなに言うんならあきらくん払ってよ!」


「そんなのぼくだって持ってるわけ無いじゃん! 一体どうすんの?」


「そんなに責めなくてもいいじゃない、来ちゃったんだから仕方ないでしょっ」


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