あの日ぼくらが信じた物
 ぼくはそう言って広がった、佐藤の黒々とした鼻の穴を見ている。「そうか『たで喰う虫も好きずき』って言うもんな」またぼくは失礼な事を心の中で呟く。

井上は細い目を更に細くして微笑んでいた。


「ぼくのとこは逆だ。ぼくがみっちゃんにベタ惚れ」


「そんな事ないもん! 私だってあきらくんのことが大好きだもん!」


 そう言うみっちゃんを少し眩しそうに見やる佐藤を見て、ぼくは誇らしく思った。

言っちゃ悪いけどみっちゃんは井上の百……いや千倍は綺麗だったから。


「なんか暑くなっちゃったから俺達は行くわ。

 ああ、鈴木。高校行っても宜しくな」


 小さくなっていく2人の背中を見送りながらバナナボートを頬張ったぼくは、感嘆の声を上げてみっちゃんへ振り返った。


「旨いっ! ……みっちゃん?」


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