あの日ぼくらが信じた物
 みっちゃんは折角のバナナボートにも手を付けず、肩を落としていた。


「そうよね。もうあきらくんとは一緒に居られないのよね。

 もし運良く余命が少し伸びたとしても……あきらくんとは別の高校なのよ?」


 自慢じゃないけど、ぼくはみっちゃんや佐藤みたく真面目に勉強なんかしなかった。学区内でも一番下の普通校だけど、何とか滑り込むことが出来たのは寧ろラッキーだったんだ。


「でもでも、学校終わってからでも会えるよ?

 毎日だって、そうさ。会えばいいじゃない!

 それに運だっていいさ!

 みっちゃんはずっといい子でやって来たんだから!」


 でもみっちゃんは、その大きな瞳を三角にしてぼくを見据えると言った。


「運が……運が良ければこんな病気になんかならない。

 運が良いなら死なないわよ!」


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