あの日ぼくらが信じた物
「みっちゃん……」

「運がいいのはあきらくんじゃないの! 勉強もろくにしないで高校に受かって!

 私なんかはいい子にしてたって真面目にしてたって、こうして病気になっちゃうんだからっ!

 きっと病気の進行だって早まって、私は高校にも行けずに死ぬんだわ?!」

「みっちゃん!!」


 そう言って彼女の頬を叩けば男らしかっただろうか。だけどぼくは何も言えず、ただしっかりと彼女を抱き締めていた。


「……あきらくん」


 しばらくしてようやく落ち着いたのか、消え入りそうな声でぼくを呼ぶ。


「ん? みっちゃん」

「ごめんなさい、私……」

「いいよ、何も言わなくて。ぼくもいけなかったんだ」

「でも私、酷いことを……」


 ぼくが普通の精神状態で居ることは出来ても、みっちゃんは違う。彼女はいつも『死』と隣り合わせの状態で、それは確実に日ごと近付いて来ているんだ。


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