あの日ぼくらが信じた物
 あちこち駆け回るみっちゃんを見ていると、映画かドラマのワンシーンを観ているような感覚に捕らわれる。

みっちゃんは可哀想な美しいヒロインを演じているだけで、実際は病気になんかなっていない。

そんな現実だったらどんなにか良かっただろう。


「あきらくん、ほら見て? パパの写真にも有ったでしょ? オッペンハイマー公園。ここで良く遊んだのよ」

「ああ、みっちゃん? 今日は寄り道したから余り時間無いよ?」

「解ってるわよ。寒いからさっさと用事を済ませばいいんでしょ? でも彼女の家はすぐそこだから!」


 みっちゃんはぼくをその場に残してスタスタと歩き去った。「待ってよ、みっちゃんてば!」駆け寄ろうとした瞬間に何を思ったのか、急に彼女は立ち止まる。


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