あの日ぼくらが信じた物
「わっ、わっ、あたたっ!」


 ぼくは危うくみっちゃんにぶつかる所をすんでで避けて、灌木の茂みに突っ込んでいた。


「あきらくん大丈夫ぅ? いや、そう言えば久美ちゃんに連絡してなかったなあって。

 久美ちゃんはこっちのお友達。川田久美ちゃん」


 とにかく来てしまったんだから行ってみようと、ぼくらはその子の家までやって来た。


「うっわぁあ、懐かしい。

 ここのアパートメント、昔とちっとも変わってない」


 道路から階段を5段程登り、重厚な作りのエントランスをくぐる。建物の中は薄暗く、如何にも古臭い感じのランプに暗い白熱電球が灯っている。

これが真夜中だったら、怖くてとても入れたもんじゃなかっただろう。


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