あの日ぼくらが信じた物
「ここはね、エレベーターが凄いのよ」


 みっちゃんに案内された廊下のその奥に有ったのは、鉄の格子が二重に施された一畳程の部屋だった。


「やっぱりまだ有った。これって手動式のエレベーターなの。でも、こんなに小さかったかしら」


 ひし形に組まれたその格子を引き開けてぼくを呼ぶ。小さく感じたのは多分、彼女が大きくなったからに違いない。


「彼女の家は5階。この針を5階に合わせて……と。

 あきらくん、ここ。レバーを上げて」



  ギュオォォォォン



 まるで工事用のエレベーターみたいにやかましい音を立てて、ゆっくりのんびり上昇する篭。勿論外とは鉄の格子で区切られているだけだから、壁が下に向かって流れて行くのが良く見える。


「凄いやみっちゃん。なんだか秘密基地みたいでカッコいい」


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