あの日ぼくらが信じた物
「そう言うと思った。フフフ」



  ヂリリリンッ



 5階に停まるとけたたましくベルが鳴る。ぼくは不覚にもビクッと身を震わせてしまった。


「私も慣れない内はビックリしてた」

「なんだい、教えてくれりゃいいのに。意地悪だな」

「あら、あきらくんには敵わないわよ。フフフ」


 玄関チャイムを押し、川田さんが現れ、みっちゃんとの再会に手を取り合って喜んでいる。ぼくはその光景をただ黙って見守っていた。


「この人があきらくんよ? こちらが久美ちゃん」

「みっつんから聞いてます。大好きなあきらくんの話」


 ぼくはハッキリ言って初対面の人が得意では無い。いくらみっちゃんの古い友達だと言われても、それは変わらなかった。


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