あの日ぼくらが信じた物
 鈴木さんちにたどり着いた。


  リンゴーン


 ウチのチャイムとは比べ物にならない重厚な音が鳴る。

区画一杯ギリギリに建てられたウチと違って、そこは門扉から玄関に続く石畳と、あちこちに植えられた草花が生活の余裕というか、一段上の暮らし振りを表しているようだった。


「はぁーい」

「ごめんなさぁい? ウチの馬鹿息子が中々帰ってこなくてぇっ!」


 ぼくは心の中で「そんなこと大声出して言わなくても」と叫んで、母のスカートを引っ張った。


「いらっしゃい、嬉しいわ? さぁどうぞお入りになって?」


 門扉を開けに出て来た鈴木……みっちゃんのお母さんは鼻が魔女ほど高い、やっぱり真っ白な人だった。

外人さんかと見間違える程の長身で、多分ウチの父と同じ位は有りそうだ。

目は吊っているけどきつくなく、上品な唇はみっちゃんにそっくり……みっちゃんがお母さんに似てるのか、そうだ。


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