あの日ぼくらが信じた物
「みっちゃん?」


 シャワールームで繰り広げられていたぼくのめくるめくアノ行為を悟られてしまったのだろうか。

それとも、寒さに震える彼女をいつまでも放置していたことへの反目だろうか。

ぼくはまたしくじってしまったのだと思い、脆弱ゼイジャクな理性しか持っていない自分を呪い始めていた。


「なにしてるの、あきらくん。早く背中のチャック外してよ」


 そうだった。ぴっちりと身体を締め上げているウェディングドレスのファスナーは、1人で外せないんだ。


「あ、ああゴメン。待って」


 ぼくはもう一度腰に回したタオルをきつく結び直すと、椅子に座って背中を向けているみっちゃんの元へ歩み寄る。

その肩に手を置くと、ヒンヤリと冷たくなっていて「大丈夫? 寒くない?」ってぼくはみっちゃんに聞いたんだ。


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