あの日ぼくらが信じた物
「だってみっちゃん、魅力的過ぎる!」

「有り難う、あきらくん。チャックも開けて」


 ぼくはそこからの絶景を惜しむようにじっくり、ゆっくりファスナーを下ろす。みっちゃんの白い背中には、艶かしくレースの帯が横断していた。


「恥ずかしいからそんなに見ちゃ駄目っ」


 みっちゃんはぼくの腕をするりと抜け出て、シャワー室に逃げ込んだ。すると花束のようなドレスだけがポイッと吐き出され「ハンガーに掛けといて」なんて言い付けられる。

 案外みっちゃんとの夫婦生活は、彼女にイニシアティヴを握られちゃうんだろうけど、お姫様とナイトの関係でそれは致し方ないことだとすぐに納得したんだ。



  シャァァァァァ



 シャワーの音が聞こえて来た。



  ムクッ

  ムクムクッ

  ピキピキピィィィン


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